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『かぐや姫』と呼ばれた藤原実資の娘

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菅原孝標が上総から帰京したのち藤原実資の娘(千古?)の家の家司として雇用された。その娘は、世間の人から実資のあまりの溺愛ぶりに、『かぐや姫』と呼ばれていた。実資と娘の関係はまさに竹取の翁とかぐや姫を思わせるものであったからである。この事実は『大鏡』の以下の段に記述されている。
出典『大鏡』(橘健治 校注・訳)日本古典文学全集20(p.119)、小学館


『大鏡』五十五段の抜粋

小野宮の大臣の三郎、敦敏の少将の同じ腹の君、右衛門督までなりたまへりし、斉敏とぞ聞こえしかし。その御男君、播磨守尹文の女の腹に三所おはせし、太郎は高遠の君、大弐にてうせたまいにき。二郎は懐平とて、中納言・右衛門督までなりたまへりし。その御男子なり。今の右兵衛督経通の君。また侍従宰相資平の君、今の皇太后宮御権太夫にておはすめる。その斉敏の君の御男子、御祖父の小野宮の大臣の御子にしたまひて、実資とつけたてまつりたまひて、いみじうかなしうしたまひき。この大臣の御名の文字なり、「実(さね)」もじは」
  といふほども、あまり才がりたりや。童名は、だいがく丸とぞつけたりける。 「その君こそ、今の小野宮の右大臣と申して、いとやむごとなくておはすめり。この大臣の、御子なき歎きをしたまひて、わが御甥の資平の宰相を養ひたまふめり。末に、宮仕人を思しける腹に出でおはしたる男子は、法師にて、内供良円の君とておはす。また、さぶらひける女房を召しつかひたまひけるほどに、おのづから生れたまへりける女君、かぐや姫とぞ申しける。この母は頼忠の宰相の乳母子。北の方は、花山院の女御、為平の式部卿の御女。院そむかせたまひて、道信の中将も懸想しまうしたまふに、この殿まゐりたまひにけるを聞きて、中将の聞えたまひしぞかし、

うれしきはいかばかりかはおもふらむ憂きは身にしむ心地こそすれ

この女君、千日の講おこなひたまふ。資家の中納言の上の腹なり。子かたくおはしましける族にや。これも、中宮権太夫の上も、継子を養ひたまえる。
この女君を、小野宮の寝殿の東面に帳たてて、いみじうかしづきすゑたてまつりたまふめり。いかなる人かお婿となりたまはむとすらむ。

<現代語訳>
小野宮実頼公の三男は、敦敏の少将と同じ腹の弟君で右衛門督まで昇進され、斉敏と申し上げました。この男君には、播磨守尹文(おさふみ?まさぶん)の女の産んだ方がお三方いらっしゃいました。長男は高遠の君で、この方は大宰大弐で亡くなられました。次男は懐平(やすひら)という方で、中納言・右衛門督にまでおなりでした。この懐平中納言のご子息ですよ、今の右兵衛督経通の君は。また侍従の参議資平の君も、やはりこの方のご子息で、ただいまの皇太后宮権太夫でいらっしゃるようです。その斉敏の君のご子息を、御祖父の小野宮の大臣実頼公がご養子になさり、実資と名づけもうされて、たいそうお可愛がりになされました。この実頼公の御名の一字をおとりになったのですよ。実資の「実」の字は」
 という世継ぎの翁のようすも、ひどく学者ぶっています。それもそのはず、この翁は、幼名を大学丸といったということです。
「このお方、実資公こそ、今の小野宮の右大臣と申し上げ、まことに尊いお方でいらっしゃいます。この実資公は、お子様のないのをお嘆きになって、お甥の資平の参議を養子になさっておられます。晩年に、御所勤めの女性を愛されましたが、その腹にお生まれになったご子息は、僧侶になられ、内供奉良円の君と申して今もいらっしゃいます。また、お邸にお仕えしていた女房をお側近く召し使っていらっしゃいますうちに、たまたまお手がつき、その腹にお生まれになった姫君は、かぐや姫と申しました。この姫君の母は、頼忠の宰相の乳母の子です。実資公のご本妻は、花山院の女御でいらっしゃった方で、為平の式部卿の御女、婉子女王です。花山院がご出家なさったのち、道信の中将も、実資公と同じくこの女御に思いをおかけもうされたところ、この実資公がお通いになられているのを聞き、中将が女御の御もとにさしあげたお歌は、

うれしきは…(恋のかなったうれしさをどれほどに感じていらっしゃることでしょうか。あなたのうれしさにひきかえ、恋を喪ったこの私の辛さは、身に泌むばかりですよ)

この女御が、実資公に連れ添われたのですよ。 この実資公の姫君かぐや姫が、千日講を行われてきました。資家の中納言の夫人の生母です。兼頼の中納言の本妻で亡くなられました。総じてお子様の少ないご一族でいらっしゃるのでしょうか。この方も中宮権太夫能信殿の夫人も、継子を養っていらっしゃいますよ。
この女君(かぐや姫)を、実資公は、小野宮の表御殿の東向きのお座敷に、帳台を構えてとても大事にお育てもうしていらっしゃるようです。まあ、いったいどんな方が姫君のお婿様になられることでしょうか。

 


竹取物語の竹取の翁とかぐや姫
竹取物語は平安時代には誰もが知るお話であったらしい。

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