上総から帰京後帰りついた家の所有者は誰か?
下級貴族は受領をやることで経済的に自立
当時は一般に男が妻の家に入るといわれていますから、普通なら妻の父親の所有、既に亡くなっていたら、その家付き娘の所有物ということになります。でも女の子が何人もいる家は困るのではないでしょうか。よっぽどの権勢家ならともかく男が何人も息子面して寄食されたのではお舅さんも大変でしょう。それで実際にはかなりケースバイケースであったとも言われています。前述のように孝標の上総赴任が決まった頃、更級作者母の父、藤原倫寧はとうの昔に亡くなっていますので、倫寧家から出発したのでないことは確実です。
菅原一家が帰り着いた家の所有者は次項で詳しい経緯を述べますが、孝標本人であることは明らかです。帰京にあたり、孝標は4年間の上総の介という受領の収入で旧三条院と呼ばれた大邸宅を購入したのです。