更級日記の東海道の旅をもとに平安時代の古地形や文献で平安時代日本を再現
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平安時代における馬の価格と飼育に要する飼料

機械的運搬手段のない時代には牛馬など家畜の飼育は必須であった。 ではこの購入価格はどの程度のものであったか。



平安時代の馬の価格



延喜式には産地別の馬の価格が示されている。馬にも等級があり、細馬(良馬)、中馬(並)、下馬(貧馬)に分けられている。

延喜式巻26主税上、国史大系延喜式中編 p.665(吉川弘文館)

平安時代の物品は稲束の数(束)で表示され、馬の価格も束で示される。1束から現代のマスで約2升の玄米が獲れる。

延喜式には各国産の馬の値段が列記されている。最高の馬は陸奥産でそれに次ぐものが、信濃、出羽、常陸、下野の産馬である。下総、上総の馬は少しお安く中馬で350束である。


この金額は現代の感覚でどの位であろうか。単純に現代の米価(昭和50年)で計算すると 350×2升=700升×450円/升=315000円 しかし、現代の米価は生産性向上で古代に比べると著しく安い。 当時の米の反当り収量は現代の約1/3、投入人員も約1/3と考えると、現代の31.5万円は約10倍の約315万円に相当すると考えたい。とにかく馬は高価な財産であったことは間違いない。





平安時代における馬の産地別価格(単位:束)
産地の国細馬中馬下馬
伊賀、志摩、近江、丹波、丹後、但馬、因幡、伯耆、備前、備中、備後、阿波250200150
伊勢、美濃300250200
尾張、出雲350300250
参河、遠江、駿河、播磨、安芸、周防、長門400350300
甲斐、相模、武蔵、上総、下総、上野、越前、加賀、能登、越中、越後、筑前、筑後、豊前、豊後、肥前、肥後500400350
常陸、下野500400300
信濃、出羽500400 300
陸奥600500300
佐渡200120
石見、紀伊、淡路300200150
大隅、薩摩、日向 400300200
壱岐、対馬100100100

馬の飼育費用



馬に健康に働いてもらうためには、十分な食事を与えなければならない。特段運搬などの使役がなければ、屋外の草の生えている場所で草を食べさせておけばよいが、荷駄を運んだり人を乗せて動く場合には、もっとカロリーのある飼料をやる必要がある。馬を扱わない現代人の感覚では、そこらの草を食べさせておけば費用の掛からない安価な乗り物と誤解しやすいが、仕事をさせればそれなりのコストはかかる。

延喜式には左右馬寮に馬の飼育に関する規定がある。

馬の飼料は大きく分けて秣(マクサ)と称される米、大豆、粟などの穀類(濃厚飼料)と蒭(カラクサ)がある。

飼料として季節により内容が異なる。与えられる飼料は草と穀類の2本立てである。冬は穀類の支給が多くなる。

ちなみに、左右馬寮の定数は細馬10疋、中馬50疋、下馬20疋、牛5頭に対し、飼育員(飼丁)1人/馬、青草刈りと牛飼いは合わせて74人で仕丁を当てている。

以下の表に左右馬寮における1日当たり支給される馬の飼料を示す。穀類の(かっこ)書きは現代の升による容量。米は玄米である。




左右馬寮における1日当たり支給される馬の飼料
季節飼料細馬中馬下馬
青草2.5束2.5束2.5束
 穀類米2升(8合) 米1升(4合)0
乾草2.5束2.5束2.5束
 穀類米3升(1.2升)、大豆2升(8合)
 
米1升(4合)、大豆1升(4合) 米1升(4合)、大豆1升(4合)

※出典:延喜式巻48左右馬寮、国史大系延喜式後編p.974,7行目(吉川弘文館)

 

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