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延喜式に見る東海道諸国の産物

延喜式に見る東海道諸国の産物
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延喜式に見る東海道沿道諸国の調・庸貢進産物



延喜式には税のうち、調、庸、中男作物で課される物産が定められている。

調は元々物品だが、庸は古くは労役であったが後には物品で代替されることが多くなった。中男作物は18歳から21歳までの半人前の男子(中男)に課される税で、国衙などがこれらの人々を使役して生産する作物、物品である。

以上の産物はその国の特産品である場合が少なくないので、国司帰任の旅でも、それらの物品が売買されたことは想像に難くない。



出典:延喜式中編、p.597、黒板勝美他編、新訂増補国史大系(吉川弘文館)

メイン画像は「関東学入門」(2000、朝日新聞社)p.116、掲載写真の一部を切り取り。

画像右部分:正倉院御物。上総国貢進の縹布(はなだ色の麻布)。縹色とは薄い藍色。

画像左部分:正倉院御物。上野国更進の黄色の絁(あしぎぬ)。

表.doc_19東海道沿道諸国の調・庸に貢進される産物
国名 税目 繊維製品 食品 その他産品
上総 調 絁(あしぎぬ) 200疋
緋細布  20端
薄貲布  114端
細貲布  63端
小堅貲布  51端
紺望陁布 50端
縹望陁布  73端
縹細布  380端
望陀貲布  100端
貲布  148端
その他
望陁布、細布、調布
鰒(あわび)  
   
中男作物 麻  200斤、紙、熟麻、白暴塾麻 芥子(からし)、雑腊、鰒(あわび)、凝海藻 紅花、漆、
下総 調 絁  200疋
紺布  60端
縹布  30端
黄布  30端
その他 布
   
   
中男作物 麻  400斤
塾麻
 
紅花
武蔵 調 緋帛(赤い絹布)  60疋
紺帛  60疋
黄帛  100疋
橡帛(栗色の絹布)  25疋
紺布  90端
縹布  50端
黄布  40端
その他
絁、布
   
   
中男作物 麻500斤
木綿
  紙、紅花、茜
相模 調 一窠綾  5疋
二窠綾  3疋
三窠綾  5疋
七窠綾  5疋
橡帛  13疋
黄帛  80疋
紺布  60端
縹布  30端
その他
絁、布
   
   
中男作物 塾麻
 
短鰒、堅魚、海藻 紙、紅花、茜
甲斐 調 緋帛  30疋
紺帛  60疋
皁帛(栗色絹布)  25疋
橡帛  10疋
その他

 
 
 
   
中男作物 塾麻 芥子、胡桃(クルミ)油、鹿脯(鹿の干肉)、猪脂 紅花
信濃 調 紺布  60端
縹布  30端
緋革  5張
その他 布
浮浪人がおれば商布
 
 
浮浪人がおれば商布    
中男作物   麻子、芥子、猪膏、猪脯、雑腊、
鮭楚割、氷頭、背腹(せわた)、鮭子
紙、紅花
駿河 調 一窠綾 6疋
二窠綾  5疋
三窠綾  4疋
小鸚鵡綾  1疋
薔薇綾  3疋
帛  120疋
橡帛  13疋
縹帛  8疋
皁帛  10疋
倭文  31端
その他  絁
煮堅魚  2130斤13両
堅魚  2412斤
 
 
白木韓櫃  20合
その他 布
   
中男作物
 
手綱鮨 39斤13両2分
火乾年魚、堅魚煎汁、堅魚
紙、紅花

解説
注1. 絁(あしぎぬ):絹織物の一種。太い絹糸(大糸)で織られた絹布。或いは太い糸、細い糸など不揃いな糸で織った粗末な絹織物。
注.2 貲布(しふ):貲とは財宝、宝という意味。貲布の実態はよくわからないが高級品には違いないだろう。
注.3 皁帛(そうはく):黒く染めた絹布
注.4 塾麻
注.5 望陁布(もうだぬの):上総国の望陁郡で産出された高級麻布。細い糸で非常に緻密に織られていた。地域ブランド。

 

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